近代貨幣の金貨や銀貨の価値や現在の価格とは?


古来より人々の生活に欠かせない貨幣ですが、なかでも明治から昭和の初めにかけて発行された「近代貨幣」は、現在も多くの人を魅了する硬貨のひとつです。しかし、近代貨幣はどのような歴史を辿り、なぜ高い価値があるのでしょうか。この記事では、近代貨幣の歴史・価値・種類について、コレクションする際のメンテナンス方法も含めて解説します。

近代貨幣とは?


近代貨幣とは、明治時代から昭和の初めまでの期間に発行された貨幣を表します。近代銭と称されることもあり、大まかな種類としては金貨・銀貨・銅貨などがあります。

全国での流通を前提として設計されていたこれらの貨幣は、日本の経済の近代化と発展の過程で大きな役割を果たしました。現在利用されている貨幣と近代貨幣の大きな違いは、発行背景と設計思想です。

明治政府は西洋の近代国家をモデルとして、経済・貨幣制度の近代化を進めました。その結果、それまで日本で利用されていた貨幣とは違い、十進法を採用し、円・銭・厘という新たな単位を導入したのです。また、金本位制を採用することで、金貨を貨幣の基盤としました。

その後、昭和28年に制定された「小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律」が制定されると、1円未満の少額通貨は通貨としての効力を失いました。これにより、近代貨幣にあたる多くの硬貨が流通しなくなったのです。

しかし、近代貨幣の独特なデザインや材質などは今なお人気を博しており、日本の経済や文化の一部として、その価値を持ち続けています。


近代貨幣の歴史


近代貨幣はどのように作られ、どのような変遷を辿っていったのでしょうか。ここでは、近代貨幣の歴史について解説します。

近代貨幣の起源は、19世紀半ば、幕末の日本までさかのぼります。この時期、日本はアメリカや欧州諸国との間に不平等条約を結んだため、「洋銀」と呼ばれる外国の銀貨などの貨幣が多く日本に流入しました。

しかし、日本の金貨は海外の価値と比較して割安であったため、外国人が大量に日本の貨幣を入手し、海外へ流出させてしまったのです。

この問題に対応するため、幕府は「万延の改鋳」を行い、金銀の比価を国際水準に近づけることで、金貨の流出を抑えることに成功しました。

このような、西洋の貨幣制度を取り入れる状況のもと、明治維新がはじまると、明治政府は日本の貨幣制度をより近代化・西洋化することを目指しました。明治4年には新貨条例が制定され、従来の「両・分・朱」という貨幣単位を「円・銭・厘」に変更するなど、大きな変化が起こっています。

また、明治政府は国立銀行条例も制定し、国立銀行紙幣の発行を開始しました。しかし、西南戦争の戦費調達などで不換紙幣が大量に発行されて紙幣の価値が大きく下落するといった問題も抱えていました。

こうした背景のなか、明治15年には日本銀行が誕生しました。日本銀行は紙幣価値の安定を目指し、最初の日本銀行券である「大黒札」を発行。これが近代通貨の始まりと言えるでしょう。

さらに、19世紀末には、日本も先進国の動きに追随して「金本位制」を確立しています。これは通貨を金と交換可能なものとする制度で、これにより実際に額面と同価値の純金を含む「本位金貨」も発行されるようになりました。

しかし、1920年代に入ると、第一次世界大戦後の不況や関東大震災などさまざまな問題に直面し、昭和2年には金融恐慌が発生しました。各国は金本位制を継続することが難しくなり、金輸出の禁止や管理通貨制度への移行などが行われています。

日本でも大量の日本銀行券を発行し、モラトリアムを発令するなど、経済の安定を図りました。これにより、金貨・銀貨など近代貨幣はだんだんと姿を消していったのです。


近代貨幣の価値


さまざまな変遷を経て発行されてきた近代貨幣ですが、実際にその価値はどれくらいなのでしょうか。ここでは、近代貨幣の価値について、発行された当時の価値・現在の価値をそれぞれ紹介します。

そもそも、通貨の価値がどこで決まるのかを考えると、「地金の価値」「市場での価値」「歴史的価値」などさまざまな要因があります。例えば、明治時代に発行された「旧1円金貨」は、明治3年に新貨条例が制定されて登場しました。

この金貨には当時の「1円=純金1.5g」というレートに合わせて、約1.5gの金が含まれています。つまり、当時の価値としては額面の「1円」であり、かつ純金1.5g分の価値がありました。

しかし、現在ではそのような額面や純金そのものの価値だけではありません。明治時代に発行されたという歴史的な価値や、発行枚数が少ない明治9年銘・明治10年銘・明治13年銘の希少価値、珍しい字体が書かれている「手変わり」の希少価値などによって価格が変化します。

そのほか「旧1円銀貨」についても見てみましょう。旧1円銀貨は明治4年に発行され、とくに貿易専用通貨として利用されました。当時の価値としては額面の「1円」であり、含有される銀の量と同等の価値として扱われてきた銀貨です。

この大型銀貨は「円銀」とも呼ばれ、外国との取引において重要な役割を果たしていたことから、中国などの外国で見かけることが多いとされます。竜や旭日をあしらった美しいデザインのため、現在でも多くの人々に愛されている近代通貨のひとつです。

また、近代貨幣のなかには、製造過程でのミスから生じたエラー銭も存在します。これらのエラー銭は、日々の技術の向上と共に減少してきましたが、とくに収集家の間では希少価値が高く、プレミア価値が付くこともあります。例えば、有孔貨の穴ずれや、刻印のズレなどです。


近代貨幣の種類


具体的に近代貨幣の種類は、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、とくに有名なものについて金貨・銀貨・そのほかの貨幣に分けて解説します。



近代金貨:明治金貨


明治時代の金貨は、大きく明治4年に制定された新貨条例によって発行した「旧金貨」と、明治30年に制定された貨幣法によって発行した「新金貨」に分けられます。

旧金貨は金と銅の合金で、金が9割・銅が1割の基準で含まれた金貨です。例えば、「旧1円金貨」は総重量1.67グラムで、約180万枚が発行されました。

また、直径が12.12mmの縮小版も存在しており、明治7年、9年、10年、13年にそれぞれ発行されています。

また、「旧2円金貨」は明治4年~13年にかけて製造されました。この金貨の重量は3.33gで1円金貨のちょうど2倍となっています。明治3年銘のものは大型で、明治5年11月にデザインが変更されてからは小型になったことも特徴です。

同じくデザインが変更された金貨として「旧5円金貨」があります。明治4年~明治30年2月まで製造された旧5円金貨も、「1円金貨」のちょうど5倍の重さになっており、明治3年・4年銘のものは大型、明治5年11月以降のものは小型に変更されました。

そのほか、「旧10円金貨」「旧20円金貨」も発行されています。これらは明治4年~13年にかけて製造され、シカゴ博覧会のために製作された明治25年銘のものがあるのも特徴です。

続いて、貨幣法に基づき発行された新金貨としては「新5円金貨」「新10円金貨」「新20円金貨」があります。これらの金貨も、金が9割・銅が1割という含有比率は変わっていませんが、純金自体の価値が上がったことにより、全体の重量が半分になりました。

例えば、新5円金貨は4.17gで、旧5円金貨の8.33グラムのちょうど半分です。そのため、貨幣法では、旧金貨はそれぞれ額面の2倍の価値となるよう修正もされました。

新金貨のなかでも特徴的なのは、明治30年~昭和7年まで製造された新20円金貨です。昭和6年に円相場が下落し、多くの金貨が海外に流出したため、昭和7年に発行が停止しました。

そのため、昭和7年にはわずか20日間しか鋳造されず「幻の金貨」として高いプレミアがつくことになったのです。



近代銀貨:明治銀貨


明治時代には銀貨も数多く発行されました。例えば、貿易用として発行された「旧1円銀貨」です。竜・旭日・菊紋・桐などデザインに特徴があり、現在も高値で取引されています。

1880年代には「新1円銀貨」も発行され、これは国内にも流通しました。また、明治8年に発行された「貿易銀」は、貿易専用の銀貨です。表面には1円銀貨と同様の竜が彫られ、裏面には貿易銀と記されています。

この銀貨は短い期間で発行が停止され、現在では希少価値が非常に高いです。そのほか、価値の高い銀貨として「新1円銀貨丸銀打」があります。

これは明治30年の法律改正で国内使用できなくなった1円銀貨を回収するため、通常通貨と区別できるよう「丸銀」という刻印を押したものです。

しかし結局あまり効果がなく、丸銀の刻印は数ヵ月でやめることとなりました。そのため希少価値が高く、高値で取引されているのです。

そのほか、50銭の銀貨も数多く流通しました。明治3年・明治4年の「旭日竜大型50銭銀貨」、明治6年の「竜50銭銀貨」、明治39年の「旭日50銭銀貨」などです。これらの銀貨はそれぞれ異なる時期や目的で発行され、現在の市場価値も大きく異なります。

とくに発行枚数が少なかったり、特定の年銘やデザインがあったりする場合、その価値は格段に上がることもあります。



そのほかの硬貨


金や銀に代わる貨幣材料として銅・アルミ・ニッケル・亜鉛・錫なども使われてきました。これらは金や銀に比べて大量生産が可能であるため、一般的な取引に使われてきた歴史があります。

例えば、銅7.5割・ニッケル2.5割を含有する「10銭白銅貨」「菊5銭白銅貨」「大型5銭白銅貨」です。

そのほか、銅9.8割・鉛0.1割・亜鉛0.1割を含む「2銭銅貨」、銅9.5割・錫0.5割・亜鉛0.1割の「稲1銭青銅貨」など、さまざまなデザインのものが発行されています。


日本近代金貨の王様!旧二十円金貨の価値


江戸から明治へ時代が変わった頃。明治新政府により国内の貨幣制度を整える政策が計画されました。政府は急速に造幣局の建設工事を進め、なんと明治時代の始まりから二年後の1870年に近代的な造幣工場が完成させました。

そして造幣工場が完成してから作られた貨幣が「二十円金貨」です。同じ明治時代に作られた金貨として、「旧二十円金貨」と「新二十円金貨」の二種類があります。それぞれの特徴を価値と共に見てみましょう。


旧二十円金貨


旧二十円金貨は1870年から1897年に発行された金貨です。

近代化が盛んに行われていた明治時代は、今までの貨幣制度と異なる制度として「新貨条例」を作りました。金貨を貨幣の基準とし、通貨単位を「円」に制定し、金額の計算に十進法を取り入れるなど、現在の貨幣制度に非常に近い仕組みです。

その時に作られた「旧二十円金貨」は近代貨幣の王様と呼ばれるほど、歴史的価値の高い金貨です。近代金貨としてほかにも1円や5円の金額で金貨が発行されていますが、一番金額の高い二十円金貨が、現在でももっとも価値があるものとして取引されています。

旧二十円金貨の最大の特徴は、その大きさと言えるでしょう。なんと重量が1枚で33.33gと重く、後に発行された「新二十円金貨」より2倍も重い作りとなっています。

旧二十円金貨の価値は重さだけではなく、少ない発行枚数も関係してきます。明治3年のものは約4万枚ですが、明治10年は29枚しか発行されていません。そのためそれぞれの価格に2倍以上の差が出ています。


新二十円金貨


新二十円金貨は1897年から1932年に発行された金貨です。

当時日本では明治の旧二十円金貨の時とは異なる、新たな貨幣法を制定しました。今までよりも金の交換比率が低くなったことで、重さは旧二十円金貨の半分ほどの約17gです。小さい分、金の重さも少ないので、金としての価値は旧二十円金貨よりも低くなってしまいます。

それ以外にも旧二十円金貨より発行枚数が多い理由も合わさり、同じ近代金貨でも旧二十円金貨の20分の1の価値しかありません。それでも一枚当たり10万円以上で取引されているので、同時期に作られた一円や五円の近代金貨より価値があると言えるでしょう。

また新二十円金貨も旧二十円金貨と同じく、作られた枚数が少ない時代のものほど価値が高くなります。その価値は発行枚数の多い年のものと低いものと比べ、10倍以上価値に差が出る場合もあります。

表には菊の紋と額面を表す「二十圓」が刻まれており、裏には製造年や表と同じ「二十圓」の刻印がされており、より現代の貨幣に近いデザインであることも特徴のひとつです。


近代通貨のメンテナンス方法


硬貨のメンテナンスは一見すると簡単そうにも思えますが、コレクターの間で価値があるものにおいては注意が必要です。硬貨はその素材と保存状態によって、メンテナンスの方法が変わってきます。

ここでは、とくに近代通貨のメンテナンス方法について詳しく解説します。

まずは、正しい保管を行うことです。硬貨の素材によっては空気中の酸素や湿度、温度変化によって変質することがあります。例えば、銅貨は空気中の酸素と反応しやすく、表面が酸化して緑青色に変わることがあります。

そのため、コインアルバムやコインホルダーなどの専用のケースに入れて保管することで、酸化や汚れを防ぐことが可能です。また、保管の際にはできる限り素手で触らないよう注意しましょう。

素手で触ると皮脂が付着し、酸化によって状態が悪くなる可能性があります。保管する場所としては、直射日光や紫外線、湿気を避け、風通しの良い冷暗所で保管することが望ましいです。

一般的には、湿度は50%以下、温度は常温で、これらが安定した場所が適しています。

また、定期的なメンテナンスも欠かさないようにしましょう。お手入れの方法としては、手袋を使用して硬貨に直接触らないよう気をつけて、やわらかい布で軽く拭くことが基本です。

力を入れすぎると削れたり、傷の原因になったりするため、極力優しく拭くことが大切になります。さらに洗浄や磨きをする場合は、より細心の注意が必要です。洗浄するには、まず温めた石鹸水で優しく洗うようにしましょう。

ただし、この工程は非常にデリケートで、力を入れすぎると貨幣の細かなデザインなどを損なう可能性があります。

石鹸水で落ちない汚れについては専門的な洗浄液を使用する場合もありますが、その際はさらに傷などをつけないよう気をつけるようにしましょう。

また、磨きについても、一般的には専門の磨き材を使用します。過度な磨きは硬貨の価値を下げる可能性もあるため、表面を傷つけないよう、また当時の状態を保っていない過度な綺麗さにしないような注意が必要です。

このように、硬貨の適切な保管やメンテナンスは価値を保管するためにとても重要ですが、適切な知識と技術がないと価値を損なう可能性もあります。

自分でメンテナンスを行う場合には十分な知識を身につけるか、場合によっては専門家に依頼することがおすすめです。


近代通貨の歴史や価値を知って魅力を再発見しよう


近代貨幣はそのデザインの美しさから、高値で取引されているものも多くあります。しかし、歴史や価値の理由を知ることで、さらなる魅力も発見できるでしょう。

また、近代通貨を持っている場合は保管やメンテナンス方法を学ぶことも重要です。正しく取り扱って、その価値を保つことのできるコレクターを目指してみてください。



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